AIチャットボットのデータはどこへ行くか|導入前に確認したい6項目(学習・保存場所・送り先・処理地域・保存期間・ログ)
AIチャットボットに質問すると、その質問文と、回答の材料になる資料の抜粋は、生成AIの事業者に送られます。どこに送られ、どこに残り、いつ消えるのかは、サービスごとに違います。
導入をためらう理由として、日本企業がいちばん多く挙げるのは「社内情報の漏洩などのセキュリティリスク」です(総務省 情報通信白書)。IPAの「情報セキュリティ10大脅威 2026」でも、組織向けで「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が初めて選ばれ、3位に入りました(IPA)。
この記事では、導入前に確認したい6項目を整理しました。各項目には、私たちが提供する Persora Connect の場合を実例として添えています(弱いところも含めてそのまま書いています)。
結論を先に書くと、次の3点です。
- **「学習に使われない」だけでは足りない。**送り先・保存場所・処理地域・保存期間は、それぞれ別の項目
- **保存場所が国内でも、処理が国内とは限らない。**資料を置く場所と、生成AIが動く場所は別
- **「閉域」「漏れない」という言葉より、6項目の事実で比べる。**根拠は規約や公開ページの該当箇所で確かめる
質問すると、データはこう流れる
- 来訪者や社員が質問する
- チャットボット事業者のサーバーが受け取り、資料と会話を保存する(データベース)
- 質問文・資料の抜粋・直近の会話が、生成AIの事業者に送られる
- 生成AIが回答を作る(処理)。事業者側でも、一定の条件で保存されることがある
- 回答が返る
送られるのは質問のときだけではありません。資料を登録するときも、検索に使うデータへ変換するために、資料の本文が生成AIの事業者に送られるのが一般的です(Persora Connect も同じです)。
データが置かれる場所は、チャットボット事業者の保存先と、生成AI事業者の処理・保存の2か所です。確認すべきことの大半は、この2か所それぞれについて「どこで」「いつまで」「何に使われるか」です。
導入前に確認したい6項目
| 項目 | 何を確認するか | Persora Connect の場合(2026年10月) |
|---|---|---|
| 1学習への利用 | 資料と会話が、生成AIの学習に使われないか(規約で) | 使われない(当社は学習に使わず、Google Cloud の規約でも学習に使われない) |
| 2保存場所 | 資料と会話ログを保存する国・リージョン | 東京リージョン |
| 3送り先 | どの生成AI事業者に送られるか。障害時の予備も含めて | Google Cloud(Vertex AI)だけ。予備も同じ Google Cloud の別モデル |
| 4処理地域 | 生成AIが処理する地域が限定されているか | 日本に限定されていない |
| 5保存期間 | チャットボット事業者側と、生成AI事業者側の両方 | 会話ログは既定1年(期限を過ぎたものは削除・契約で変更可)。解約後は終了日から30日を経過した後に削除。生成AI側は通常保存されず、不正利用の疑いを自動検知した場合に限り最大90日 |
| 6ログに残るもの | システムの記録(ログ)に、質問文や個人情報が残らないか | 会話の本文は記録しない。管理画面の操作(サインインを含む)は、誰が(メールアドレス)・いつ・接続元IPを記録する(操作の記録は1年、システムのログは30日で削除。システムのログの保管場所は日本国外を含む) |
詳しい条件は、当社のデータの取り扱いページにまとめています。
1. 学習への利用 —— 確認は規約で
個人情報保護委員会は、個人データを含む内容を生成AIに入力する場合、提供事業者がその個人データを機械学習に利用しないこと等を十分に確認するよう求めています(生成AIサービスの利用に関する注意喚起等)。
確認は営業資料ではなく、利用規約や公開ページの該当箇所で行ってください。チャットボット事業者と、その先の生成AI事業者の両方について確かめるのが確実です。
2・3. 保存場所と送り先 —— 「予備」の送り先を見落とさない
保存場所は比較的よく公開されていますが、**送り先(どの生成AI事業者か)**は書かれていないことがあります。
特に見落としやすいのが障害時の予備です。主に使う生成AIが止まったとき、別の事業者の生成AIで回答する構成はよくあります。可用性のためには合理的ですが、その場合は予備の事業者にもデータが送られます。
参考までに、Persora Connect は2026年10月に、予備を含めて Google Cloud の生成AIだけに切り替えました。代わりに、Google Cloud 全体に障害が起きたときは回答できず、「混み合っています」と案内します。どちらを取るかは、サービスごとの設計判断です。
4. 処理地域 —— 保存場所とは別に聞く
「データは国内に保存」と書かれていても、回答を作る生成AIが国外で処理する構成はよくあります。生成AIの処理を国内に限定できるかは、使うモデルや提供形態によって変わるためです。
Persora Connect の場合、資料と会話の保存先は東京ですが、生成AIが処理する地域は日本に限定されていません。国内での処理が必須の場合は、契約前に個別にご相談ください。
5. 保存期間 —— 生成AI事業者側も確認する
保存期間は、チャットボット事業者側(資料・会話ログ)と、生成AI事業者側(送られた質問文など)の両方があります。
生成AIの事業者は、不正利用の監視のために、送られた内容を一定の条件で保存することがあります。たとえば Google Cloud の生成AIでは、自動の仕組みが不正利用の疑いを検知した場合に、送られた内容を最大90日保存することがあると公開されています(Google Cloud: 不正使用のモニタリング)。
6. ログに残るもの —— エラーの記録に質問文が残っていないか
見落とされやすいのが、システムの稼働記録(ログ)です。エラーの調査のために、質問文の一部をログに書き出す作りになっていることがあります。
これは私たち自身が2026年10月に見直した点でもあります。一部のエラー時に質問文の先頭がログに残る作りになっていたため、字数などの情報だけを残す形に改めました。ログに何を残すかは、事業者に直接聞かないと分からないことが多い項目です。
反対に、残すべきものもあります。Persora Connect では、管理画面の操作(サインインの成功・失敗、資料・設定・ユーザーの変更、会話ログの閲覧と書き出し)と、社員による下書きの書き出し・チャットへのファイルの添付を、誰が・いつ・どこから(接続元IP)操作したかとあわせて「操作の記録」に残しています。不正な利用や持ち出しを後から確かめるための記録で、お客様の管理者が画面で検索し、CSVで書き出せます(1年保存し、期限を過ぎたものは削除)。当社がサポートのために管理画面に入った操作も、この記録に残り、お客様から見えます。「何を残さないか」とあわせて「何を残すか」も確認しておくと、監査や事故の調査のときに困りません。
「閉域」「漏れない」より、事実で比べる
「閉域」という言葉が指すものは、専用回線、クラウド内の私設経路、社内設置、国内リージョンでの処理など、サービスによって違います。また、「情報が漏れない」と言い切れる根拠が示されることもまれです。
実際の漏洩事故の原因を見ると、2025年に上場企業が公表した個人情報の漏えい・紛失事故180件のうち、**ウイルス感染・不正アクセスが116件(64.4%)**でした(東京商工リサーチ)。言葉の印象より、この記事の6項目と、認証などのアクセス制御が実際にどうなっているかを確認するほうが確実です。
アクセス制御(誰が・どこから使えるか)の確認項目は、社内AIチャット導入のセキュリティチェックリスト15項目で整理しています。
来訪者が入力する個人情報について
Webサイトに置くチャットボットでは、来訪者が自分で個人情報を書き込むことがあります。多くのサービスでは、それも会話として保存され、回答を作るために生成AIへ送られます。
AIに個人情報を聞き出させない設計に加えて、要配慮個人情報(病歴など)を入力しないよう来訪者に案内することをおすすめします。
確認の進め方
候補のサービスに、この6項目への回答と、**その根拠(規約や公開ページの該当箇所)**を出してもらうのが確実です。根拠が示せない項目は、契約前に書面で確認してください。
Persora Connect の回答はデータの取り扱いページで公開しています。セキュリティチェックシートへのご回答は、persora@shigegegege.com で承ります。料金の比べ方はAIチャットボットの料金比較をご覧ください。
よくある質問
「学習に使われない」と書いてあれば、データは外に送られないのですか?
そうではありません。回答を作るために、質問文や資料の抜粋は生成AIの事業者に送られます。「学習に使われない」は送られた後の使い道の話で、送られるかどうかとは別です。送り先・保存期間・処理地域もあわせて確認してください。
保存場所が「国内」なら、処理も国内で行われますか?
同じとは限りません。資料や会話を保存するデータベースが国内にあっても、回答を作る生成AIが国外で処理する構成はよくあります。保存場所と処理地域は別の項目として確認してください。
「閉域」「情報が漏れない」とうたうサービスなら安心ですか?
言葉だけでは判断できません。閉域が何を指すか(専用回線・クラウド内の私設経路・社内設置・国内リージョンなど)はサービスによって違い、「漏れない」と言い切れる根拠が示されることもまれです。この記事の6項目を、規約や公開ページの該当箇所とあわせて確認するのが確実です。
来訪者がチャットに個人情報を書き込んだらどうなりますか?
多くのサービスでは、会話として保存され、回答を作るために生成AIへ送られます。AIに個人情報を聞き出させない設計に加えて、要配慮個人情報(病歴など)を入力しないよう来訪者に案内しておくことをおすすめします。