外国人従業員の社内問い合わせを多言語AIで対応する|主要サービスの対応言語と料金
外国人従業員から届く「有給はいつから使えるか」「年末調整の書類はどこ」といった質問は、内容そのものは定型的です。にもかかわらず担当者の負担が重いのは、同じ説明を複数の言語で繰り返すからです。この記事では、この用途に使える多言語AIチャットボットについて、主要サービスの対応言語と料金を各社の公式サイトを出典として一覧にし、社内向け特有の選定ポイントを整理します。
結論を先に書くと、次の3点です。
- 対応言語の多さでは差がつきにくい。主要サービスは軒並み多言語に対応しており、10言語以上や80言語以上をうたうサービスもある
- 差がつくのは料金の見えやすさと課金単位。この用途は見積もり前提のサービスが多く、多言語込みの月額を公式サイトで確認できるものは限られる
- 顧客向けの多言語対応をそのまま流用すると、課金単位と認証で詰まることがある
顧客向けの多言語対応とは要件が違う
多言語チャットボットの情報は「訪日外国人の接客」を前提にしたものが大半です。社内向けに転用するときは、次の3点で要件が変わります。
1つ目は認証です。 社内規程・給与・手続きの情報を扱う以上、URLを知っていれば誰でも開ける状態にはできません。社員だけがアクセスできる仕組み(ID・パスワード、SSO、接続元IP制限など)が必要になります。退職者を即座に利用停止できるかも確認事項です。詳細は社内AIチャット導入のセキュリティチェックリストにまとめています。
2つ目は課金単位です。 顧客向けは月間会話数での課金が一般的ですが、社内利用は利用者が自社の社員に限定されるため人数が読めます。一方で会話量は制度改定期や年度初めに跳ねます。会話数課金の製品を社内に流用すると、いちばん使われる時期に上限へ達するという逆転が起きえます。
3つ目は答えるべき内容です。 顧客向けは営業時間やアクセスなど公開情報が中心ですが、社内向けは就業規則・安全衛生・社内手続きといった、誤解が従業員の不利益に直結する情報を扱います。「資料に無いことは答えず担当者へ案内する」設計であるかが、顧客向け以上に重要になります。
主要サービスの対応言語と料金(2026年8月15日時点)
各社の公式サイトを出典として、確認できた内容のみを記載しています。「非公開」「記載を確認できず」は、その情報が存在しないという意味ではなく、公式サイトの該当ページでは確認できなかったという意味です。正確な条件は各社へお問い合わせください。
| サービス名 | 提供会社 | 対応言語(公式表記) | 月額 | 初期費用 |
|---|---|---|---|---|
| Persora Connect | 株式会社shigegegege | 日本語・英語・中国語(簡体字/繁体字)・韓国語・タイ語。全プラン標準・言語による追加料金なし | ¥30,000〜(税別・初月無料) | ¥0〜 |
| RICOH Chatbot Service | リコー | 英語・中国語(繁体字/簡体字)・韓国語など。Enterpriseプランおよび生成AIチャットが対応 | ¥18,000〜(Starter)/Standard ¥50,000/Enterprise は別途見積 | 公式ページに記載なし |
| ObotSERVE・特定技能AI | 株式会社ObotAI | 日本語・英語・中国語(簡体字/繁体字)・韓国語・タイ語・ベトナム語・ネパール語・ロシア語・ウクライナ語・インドネシア語・ポルトガル語(12言語以上)。ObotSERVEは100言語以上 | 非公開(要問い合わせ) | 非公開 |
| おりこうAIコンシェルジュ | 株式会社ディーエスブランド | 80言語以上(英語・中国語(繁体字/簡体字)・韓国語・ベトナム語・タイ語を明記) | 公式ページに記載を確認できず | 同左 |
| HiTTO | 株式会社マネーフォワード | トップページでは多言語対応の記載を確認できず | 非公開 | 非公開 |
補足を3点。
- RICOHは多言語が上位プラン側です。月額1.8万円のStarterは公式ページ上で多言語対応の対象として案内されておらず、多言語を含む構成はEnterprise(別途見積)または生成AIチャットのラインナップになります。したがって「多言語込みの月額」は表から読み取れません
- ObotAIは特定技能人材向けの専用ソリューションを持っており、この用途に最も近い設計思想を持つ1社です。料金は非公開のため、比較には見積もりが必要です
- おりこうAIコンシェルジュは労務規定・安全衛生の教育用途を公式に明記しており、外国人従業員向けの社内利用を想定しています
料金が「非公開」になりやすい理由
この用途で料金を公開しているサービスが少ないのは、企業ごとに要件の幅が大きいためです。対象人数、既存資料の量と形式、認証方式、構築をどこまで代行するかで工数が変わるため、見積もり方式になること自体は自然です。
ただし検討する側から見ると相場が掴めないという問題が残ります。見積もりを依頼するときは、最低限この4つを揃えて聞くと各社の条件が比較可能になります。
- 多言語は標準機能か、オプションか(オプションなら言語数ごとの加算額)
- 課金単位(登録ユーザー数か会話数か。会話数なら上限到達時の扱い)
- 初期費用に何が含まれるか(資料の取り込みを自社でやるのか、代行なのか)。「初期0円」が生成AIプランとは限らないので、AIが回答文を生成するプランでの金額を聞いてください
- 契約期間の縛りと最低利用期間
参考として、私たちが提供するPersora Connectは、セルフ運用のライトプランが初期費用0円・月額3万円(税別)・初月無料、社員向けは登録ユーザー数10名からで、全プラン月契約・最低利用期間なしです。多言語(英語・中国語・韓国語・タイ語)は全プラン標準で、言語による追加料金はありません。最新の料金はこちらでご確認いただけます。
実装して分かった、多言語で見落とされやすい3点
ここからは、私たちが実際に多言語対応を実装するなかで分かったことです。カタログの「対応言語数」だけでは見えない部分なので、他社を検討する際の質問項目としても使えます。
中国語を1言語として数えているか
簡体字(中国本土・シンガポール)と繁体字(台湾・香港)は、単なる字体の違いではなく語彙が異なります。「対応言語10言語」と書かれていても、中国語をまとめて1つと数えているのか、簡体字と繁体字を別々に扱っているのかで実際の体験は変わります。私たちは内部的に zh-CN と zh-TW を別の言語として保持しています。
回答する言語を、何で決めているか
見落とされやすいのが「どの言語で返すかの決め方」です。質問文の言語をAIに判定させて返す方式は、短い質問や漢字だけの質問で判定がぶれると、返ってくる言語まで変わってしまいます。私たちは画面上の言語選択(🌐)またはブラウザの言語設定を最優先し、それが無い場合は基準言語に固定する設計にしています。質問文の言語判定は分析用の記録にとどめ、回答言語の決定には使いません。検討中のサービスには「回答言語は何を根拠に決まるか」を聞いてみてください。
会話が集中する時期に止まらないか
社内利用では、年度初め・制度改定・年末調整の時期に質問が集中します。会話数で課金・制限する仕組みだと、いちばん必要な時期に上限へ達する可能性があります。私たちは社員向けを登録ユーザー数での課金とし、会話数では停止しない設計にしています(席数の上限は登録時に管理します)。
導入前に確認しておきたいこと
多言語対応は「言語が増えれば解決する」ものではありません。導入前に次の3点を押さえておくと、失敗が減ります。
- 原文の参照先を残す。生成AIによる多言語出力である以上、正確性は保証されません。就業規則や安全衛生など不利益に直結する内容は、日本語の原文や担当窓口への導線を併記する運用と組み合わせてください
- 答えられなかった質問を見る。どの言語で何が聞かれ、何に答えられなかったかが分かる仕組みがあると、資料の穴を埋めながら精度を上げられます
- まず1〜2言語で始める。在籍者数の多い言語から始め、実際の質問を見て広げるほうが、最初から全言語を揃えるより運用が回ります
具体的な費用の考え方は社内ヘルプデスクAIの費用相場と失敗しない選び方で、日本語の資料1つを多言語で使う仕組みは日本語のFAQ1つで英語・中国語・韓国語対応にする方法で解説しています。
自社の就業規則や社内マニュアルで実際の回答精度を確かめたい場合は、お手元の資料でのデモをご用意できます。日本語で登録した資料に対して、英語・中国語・韓国語・タイ語で質問したときにどう答えるかを、導入前にご確認いただけます。
よくある質問
顧客向けの多言語チャットボットを、そのまま外国人従業員向けに使えますか?
言語機能自体は流用できますが、課金単位と認証が合わないことがあります。顧客向けは月間会話数での課金が一般的で、社内利用では制度改定期などに会話が集中して上限に達する可能性があります。また社内規程を扱う以上、誰でも開ける状態ではなく社員に限定する認証が必要です。
対応言語は何語から始めるべきですか?
自社で最も人数の多い在籍国の言語から始めるのが確実です。全言語を一度に揃えるより、実際に質問が来る言語を1〜2言語で始めて、未回答の質問を見ながら広げるほうが運用が回ります。
社内向けは会話数課金と登録ユーザー数課金のどちらが向いていますか?
社内利用は対象者が自社の社員に限定され人数が読めるため、登録ユーザー数課金のほうが予算化しやすい傾向があります。会話数課金を社内に使う場合は、上限に達したときの扱い(停止・従量・増量)を必ず確認してください。
AIの翻訳や多言語回答の正確性は保証されますか?
生成AIによる出力である以上、正確性は保証されません。就業規則や安全衛生など誤解が不利益に直結する内容は、原文(日本語)の参照先を併記する、重要事項は人が対応する、といった運用と組み合わせることが前提になります。